POLI.designのシステミックデザイン

POLI.designのシステミックデザイン

2025/10/22

2025/10/22

イタリア・ミラノにあるPOLI.designは、ミラノ工科大学(Politecnico di Milano)のデザイン・システムを構成する3つの柱のひとつとして、教育・研究・実践をつなぐグローバルなデザインナレッジ・ハブの役割を担っています。1999年に設立され、スクール・オブ・デザイン(教育)、デザイン学部(研究)と連携しながら、企業・行政・地域社会と協働して知を実践の現場へと接続しています。

私たちknots associatesは、2025年7月にPOLI.designと正式に提携し、「日本における公式パートナー(Regional Development Officer – Japan)」に就任しました。この提携により、日本企業や教育機関とPOLI.designの間に共創のプラットフォームを築き、教育プログラムや新規事業開発プロジェクトを共同で設計・実行していきます。
https://www.knotsassociates.com/articles/1387/

POLI.designが世界の企業から支持を集める理由は、「戦略」以上に「ヘリテージ(遺産)」にあります。M&Aや組織再編を経て自社の原点や価値を見失った企業が、改めて自らの文化・歴史を見つめ直すためにPOLI.designを訪れます。数値化しづらい資産を掘り起こし、未来の方向性をともに見出す点にPOLI.designの独自性と強さがあります。

POLI.designが扱うデザイン領域はきわめて広範です。ファッション、インテリア、空間・建築、文化遺産、デジタル・インタラクション、ビジネスデザイン、コミュニケーションデザイン、プロダクトデザインといった多岐にわたる分野を横断し、それらをシステミック(全体的・横断的)に統合するアプローチをとっています。これは、単なる意匠や表層的な制作ではなく、社会・経済・産業の文脈を踏まえ、問いを立てながら複雑な要素を結びつけていく手法です。

日本国内での導入は企業との関係性を丁寧に築きながら進めている段階ですが、ヨーロッパをはじめとするグローバルでは、すでに大手企業との協働を通じて多様な成果を上げています。たとえば、ソニーや富士通、NTTデータ、パナソニックなどとの連携を通じて、デザインシンキングの導入から組織変革、イノベーションの仕組みづくりまで幅広い実績を残しています。


ミラノ工科大学発の「知のデザインハブ」

― 改めて、POLI.designについて紹介していただけますか?

渡辺 デザインの力で…デザインの力って言っちゃうのは、日本語で言っちゃうと、なんか見かけのデザインって感じさせてしまうのかもしれないんだけど。

― デザインという言葉の定義については、また別の機会に詳しく話しましょう。

渡辺 POLI.designはイタリア・ミラノ工科大学のデザイン専門機関で、いわば大学が保有している会社組織、プライベートカンパニーです。日本だとどういうところかな。ちょっと違うけど、イメージは早稲田大学エクステンションセンターみたいな感じ。

冨田 大学として学生に教えるんじゃなくて、社会人、社会とか会社に対して何らかのサービスを提供する。専門会社っていうイメージなので、日本だとあんまりないと思うんですよ。教育としても提供するし、プロジェクトとしても提供する。例えば実際に企業の中に、彼らのアセットやリソースを持っていく。 研究施設やミラノ工科大学の教授陣とかを持っていけるんですよ。

― 実は私、POLI.designがこれまでしっかりと想像できなかったんですが、ようやくわかってきました。ミラノ工科大学の持っているプライベートカンパニーってことなんだ。

冨田 ミラノ工科大学は国立大学なので、直接企業と営利目的で何かをするっていうのが制度上難しいと思うんですよね。

だから間に会社を挟むんだけど、使ってるリソースはミラノ工科大学なんですよ。企業とプロジェクトを作っているのは、だから実態としてはほとんどミラノ工科大学がやっているということですよね。

渡辺 ほとんどの場合そうですね。

― ミラノ工科大学のメソドロジーを、全て投入してるということですか。

冨田 全部大学のメソッドロジーです。研究も、研究所も、会社自体もキャンパスの中にありますし、プロジェクトも大学校舎の中にあります。

― ちなみに社長はどなたなんですか?

渡辺 ミラノ工科大学の教授です。

― 「工科大学」って、日本語の感じからエンジニアリングに拠るのかなというイメージがありましたが、まさにデザインなんですね。

冨田 エンジニアリングデパートメントとビジネスデパートメント、そしてデザインデパートメントがあるんです。

渡辺 デザインデパートメントが、その中だと一番、世界評価が高い。

POLI.designとknotsの共通点

― ここでいうデザインというのは、「計画的な設計」ってことですね。

渡辺 そうですね、計画設計。

― だから、いわゆる意匠的なデザイン、要は服をつくるだけではないと。

渡辺 それもあります。それもあるけれども。

彼らは「システミックデザイン」っていう言い方をしてますね。デザインの世界も変わってきていて、領域を横断したシステミックデザインというものが求められているっていうことは彼らも言っていますね。

― 私たちは、このテキスト、記事コンテンツを様々な方に読んでもらえたらいいなと、特に文脈を理解してる方々に読んでいただけるとありがたいなと思ってコンテンツを作っていますが、それでもシステミックデザインって、とにかく日本語にしにくい言葉が2つ、重なっているんです。

渡辺 私たちが言うところの「システムデザイン」のことを、POLI.designはシステムミックデザインって言っているみたい。システムデザインと言っても通じない。(笑)

「システムとしてデザインする」っていう意味でシステミックっていう言い方をしているんだけど、「システムとして」って何かというと、「全体」ですね。さっきの話題みたいに、あるサイロひとつの領域を深く見るんじゃなくて、それがどういうふうに繋がっていて、ひとつの大きなソリューションを作っているのかという、その全体を見る。これが「ホリスティックビュー」っていう、全体総括的な視点で、かつ領域を横断するトランスディシプリナリーにデザインをする、っていう言い方をするんです。

POLI.designの先生たち、デザイン学部の先生たちから出てくるんですよね。それを聞くと、私たちと結局考え方は同じなんだなと思うんです。

「困ったな」をデザインで解決する

― もう少し具体的なところを伺うことで、もしかしたらわかりやすくなるのかもしれない、理解が深まるかもしれないと思って伺います。POLI.designが進めているプロジェクトで事例として出せるようなものはありますか? 代表的なプロジェクトとか。

渡辺 代表的な何かがいっぱいありすぎて、何が代表なんだろうね。

冨田 企業の課題解決を全部やってるイメージなんですよ、まずもって。

― 「困ったな」を解決する先として。

冨田 うん。車を作るのか、食べ物を作るのか。街を作るのかっていう感じに落ちるんですよね。POLI.designの発想としては。代表例を出すっていうのはすごく難しい。ただもちろんフェラーリがどうこうですよとか、インテリアの高級ブランドを支援してますよとかっていうのはいっぱい出るんだけど。我々が普通にその事例を聞いても、POLI.designが一体どこにバリューを発揮したのかっていうのが逆にわかりにくい感もある。

なぜなら全体をやっちゃってるから。ここの数字が向上しましたとかだったら普通わかりやすいじゃないですか。マーケティングの支援が入って、ここはこうなりました、みたいな。

POLI.designの場合、「困ったな」に対して、結果的に全体が困らなくなってるんで、「結果どうなったんですか」って言ったら「いい感じになりました」になるわけですよね。めっちゃ難しい。

― ちなみに課題っていうのは、こういう課題があるので診てほしいではなく、knots associatesみたいに課題を見つけ出すところからやってるんですよね。

冨田 そうです。課題があります、ではなく「困ったな」が先なんですよ。

例えば、事業が傾いた企業やブランドにM&Aだったりファンドが資本を注入して、業績を改善するために人員削減をしたり拠点を潰したり事業の選択、集中をして業績改善しました。でも数年立ったときに業績がドンと落ちてきて、やっぱりどうしよう…となったとき、そのときにPOLI.designに駆け込んでくるんです。

その時には何が課題、問題で、何をどうしていいかもわからんみたいな状況だったりするわけですね。

Heritage ─ 企業の遺産を掘り起こす

― 普通だったらいわゆる戦略コンサルタントを呼ぶとかなら理解しやすいんですが、なぜPOLI.designなのか。

渡辺 私もずっと謎だったんですよね。

でもおそらく、彼らの一番大事にしているところって、「ヘリテージ(Heritage)」なんですよ。その企業、その人がどういう経緯で成り立ち、何をしてきて、どういう遺産を持っていて…そこがとにかく大事だよね、それしか企業の取り換えの効かないところはないですよねって。M&Aとかで、外から、他所のブランドが入ってきてみんな同じようにしていったら、みんな同じような会社になっちゃうわけです。自分自身、企業自身を見失っちゃってるところに、自分たちのヘリテージっていうものをしっかりと、もう1回取り戻さないといけない。

冨田 「問いを立てる」っていうことをすごく言いますよね。

― 正しい問いを一緒に考えていくところから。

冨田 そういうことです。何か良くない、うまく行っていないというのはみんな感じてるんだけど。それが具体的に言うと何が悪いんですか?っていうと、なんか調子悪いんだよ、みたいな。そんな感じの企業が来るわけですよね。それで、なんか頭痛いとか言ってたけど、リサーチした結果、実は胃の病気だったみたいなことがわかってくる。

結果として何かすごく大きな業績改善とかもやってるんだけども、定量と定性の両方でバリューを発揮しちゃってる。

― どこが効いてるかもわからんと。

冨田 そう。面白いのが、イタリアの企業というか欧州の企業の特徴かもしれないですが、定性的な成果というものを定性的な成果として受け取ってくれるんですって。定性的な成果をわざわざ定量化しなくても良い。まさにセンスメイキングセオリー。Make Senseすれば、具合が良くなったことをそのままバリューとして受け取ることができるから、提供者側も受益者側も、過度な定量化の方向にいかない。

バリューとして得られたよね、成果として得られたよね、っていうコンセンサスのレベルがめちゃくちゃ成熟してる感じなんですね。

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