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リモートコラボレーションツール~大学院講義にZoom、Discord、Miroを投入して分かったこと

新型コロナの影響で、多くの人が一堂に集まることが難しくなり、ますますリモートコラボレーションのニーズが高まっています。

リモートコラボレーションとは、どういったものでしょう?
それは地理的な場所や地位などに関係なく、チームメンバー、パートナー間のコラボレーションを活性化するためのプロセスと言えるのではないでしょうか。

私たちknots associatesにおいても複数の場所に点在するチームメンバーがシナジー効果を生み出せるよう積極的に、様々なリモートコラボレーションツールを用い、コミュニケーションを図っています。

そこで先日、大学院の講義をサポートした際に、グループワークで幾つかのツールを組み合わせ使用して分かったことを共有します。

グループワークに使った3つのツール

使用したツールは「Discord、Zoom、Miro」の3つになります。
Discord1は一つのサーバーでテキスト・ボイス・ビデオの機能がすべて使用できるツールで、主にオンラインゲーム中のインタラクティブなコミュニケーションに活用されています。管理の設定の自由度が高く、自由にチャンネルを作りサーバー内でコミュニティを作成することや参加することができます。カジュアルで自由な雰囲気で参加できる点が特徴的です。

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Zoom2はパソコンやスマホを使用したオンライン会議やセミナーに特化されたツールです。会議に特化していることもあり、話している相手や内容に集中しやすく、グループ分けができる点、画面や資料共有が容易であることが特徴的です。今では学校や企業、イベントに最も多く活用されています。

Miroはオンライン上のホワイトボードです。マインドマップ・ブレインストーミング・メモ書きなど、さまざまな可視化の共同作業をオンラインでできるのが特徴で、主にワークショップやプロジェクトチームでのディスカッションなどに活用されています。

ここで上げた3つのツールは、すべて無料プランがあり、手軽に試せるツールです。

それぞれのツールにはそれぞれ良い点、足りない点がありますが、この3つを組み合わせることで上手にお互いの機能を補完することができます。

なぜDiscord、Zoom、Miroを選択したのか?

講義の中で、オンラインツール3つを組み合わせて使うことは、ツールの使用に慣れる必要があり、教える側にも、受講側にも多くの負担が掛かることになります。それにもかかわらずなぜ3つのツールを使用したのか、またリモートコラボレーションツールがある中でなぜこの3つのツールを選択したのかについて説明します。

まず一つ目は、「集合知の創出しやすさ」です。集合知を創出しやすくするには、メンバー間の自由闊達なディスカッションを通じてそれぞれの知識や視点を掛け合わせることが必要です。そのため必要な要素として、①心理的安全性、②ディスカッションの可視化、③引き出し可能な形での保存、の3つが上げられます。

Discordは上記に言及したとおりオンラインゲームに特化したツールであり、カジュアルな発言をしやすいのが特徴であるため、心理的安全性が確保されやすく、参加メンバーのフラットな関係性を維持することや雑談の活性化を促しやすいです。

チャットチャンネルは、メンバーそれぞれが都合の良い時間に発言して、確認することができるため発言のハードルを下げられます。メンバーの発言に触発され、意見を出し、出された意見からアイデアが連想される、深堀されることで集合知の創出に役立てられます。

Discordでは言葉や会話でのコミュニケーションが主となる一方、Miroでは、ホワイトボードを使うことで、よりビジュアル化されたディスカッションが実現できます。また軌跡が可視化されるため、繰り返し前後のプロセスに行き来することができ、議論の質も高まりやすく、結果、集合知を創出することにつながりやすいのではないかと思います。

DiscordとMiroを上手に使うことで、「集合知の創出」に必要な3つの要素を満たすことができます。

3つのツールを選択した理由のもう一つは、「共有のしやすさ」です。講義や研修、ワークショップにおいて、ディスカッションの質と同様に大切なこととして、他のチーム、メンバーへの共有しやすさという点があります。

DiscordとMiroは、一つの画面に他グループのコミュニケーションチャンネルや作業中のボードのタイトルを表示することができ、クリックするだけで、閲覧・参加ができます。運営側、受講者共にとても共有しやすく、講義もスムーズに進めることができます。

全体アナウンスのしやすさと安定した音質を生かす意味でレクチャーはZoomで行い、Zoomだけでは実現できないディスカッションの可視化、保存、また時間制約のない気軽なコミュニケーションをDiscordとMiroで補完するために、3つのツールを組み合わせ、講義を進めていきました。

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講義をどのように進めたか?

は、実際にどのように講義を進めていったのでしょう。そのプロセスを大きく分けると「事前課題」「講義中のガイド」「フォロー」の3つになります。

コラボレーションツールの利用に学生が戸惑わないよう、講義の中だけで突然ツールを使ったワークを進めるのではなく、「事前課題」でツールに馴染む機会を事前に設けることも大切です。

基本的な講義は、最も普及しているZoomを使用し、1回目の講義では「事前課題の説明」のみを行いました。講義内容はあくまでも講義の中身に時間を割けるよう、既存のガイド動画や使い方の詳細をまとめた資料を配布し独学を促しました。

その後、次回の講義までの間、ツール使用の様子を見守り、躓くポイントを拾い改善をしながら、2回目の講義で補足説明を行いました。3回目からは、多くの受講者がツールを使いこなし、慣れた様子で講義に参加していました。

また「フォロー」については、複数の学生やTAなどとも協力し合い、教員やファシリテーターがフラットな関係で知を共有し合い、助け合いを醸成していくこともとても重要なポイントになるでしょう。

一方、注意すべきなのは、時間配分がオフラインの時と異なる点です。各メンバーがそれぞれのリテラシーに沿いながら、使用するコラボレーションツールに慣れていく必要があるため、時間は余裕を持って設計できるとよいでしょう。

メンバーも慣れていくにつれ、スムーズに動けるようになるため後半は時間がより効率的に使用することができます。

メリットとデメリットは?

これらのコラボレーションツールのメリットとデメリットについても見ておけるとよいでしょう。

メリットについては、今まで見てきたように、コラボレーションツールを活用することで議論の「トレーサビリティ」と「イタレーション」が容易になる点です。

オンライン上にいつでもアクセスできる形で、今までの議論の経緯や出されたアイディア、決定プロセスが残っているため、共有もしやすく、また自然発生的にその内容を見ながら雑談が起こりやすい点もこれらのツールのよい点と言えるでしょう。

反対にデメリットについても見ておきたいと思います、

一つは、ITリテラシーの違いによるギャップです。学生や参加者によっては、業界や職種等の違いからITツールの利用に長けている人と、そうではない人に分かれることがあります。

ITリテラシーが高いメンバーはスムーズにディスカッションに入っていけますが、中にはツールの利用が障害となり、ディスカッションに上手く入っていけないメンバーも出てくることがあります。

そういった場合のフォローなどは、前章を参考に全員が同じスタートではないことを認識し、立場を問わず助け合っていくことを心がけていけるとよいでしょう。

もう1点、費用やサポートをするための人員についても考えておくことが必要です。同時に多くの人数で使用する場合や、長期、長時間ツールを継続的に使用する場合は、有料のプランで進めておけることの方が安心でしょう。

サポートの人員についても、ITリテラシーのばらつきをカバーし、全員が等しくディスカッションに参加できる状態をつくるには、オフラインで行ってきたよりも多くの人員が必要となるケースがあります。可能であれば、サポート人員や参加者からの協力者など、余裕を持った配置を準備できるとよいでしょう。

まとめ

グループワークでコラボレーションツールを使ってみて分かったことを、それぞれのツールの特徴、良い点、カバーすべき点、使用する際の注意点からまとめてみました。

いかがでしたでしょうか。

コラボレーションツールは言葉の通り、コラボレーションを促進するための手段です。一番大切なのはコラボレーションとういう目的に対し適切なツールを選ぶことです。

コラボレーションは、メンバーの構成や各自の特性、プロジェクトの内容などに影響され、様々な要素が複雑に絡み合い、偶然を重ね合いながら進化します。

このように、不確実性が高く、計画的に達成することが難しい目的に対し適切な手段を選ぶためには、目的を達成するための要素を分解し、要素を小さな目的に置き換え、小さな目的ごとにツールを検討するプロセスが必要だと思います。

検討するプロセスは、ツールを実際に試しながら、その結果を踏まえ修正を加えていくことが有効でしょう。

今回の3つのツール試用に関しては、教員やその家族、知人を集い、少人数でのツール利用、ツールガイドの勉強会を数回行いました。勉強会は、ランチを交えた雑談やオンライン懇親会での利用など、試す側も楽しくできるよう心掛けました。

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