なぜ我々はイタリアに向かったのか

なぜ我々はイタリアに向かったのか

2025/10/23

2025/10/23

今一度、「型」に立ち戻る

― 今回(2025年9月)のイタリア訪問では、POLI.designとのコミュニケーションが主な目的だったんですよね。

渡辺 現地で直接話しをすることで、新しい内容がどんどん入ってきますよね。

冨田 実務としては打ち合わせ、すり合わせ。knotsとPOLI.designで何ができるかということなんですけど、わざわざ現地に行った一番大きな目的は、いわゆる「守破離」だと思っていました。

我々knotsもいろんなことをやってきたとは思っているんですが、一旦、それを脇に置く。POLI.designという世界の一線級のプレイヤーから「型」をもう一度学ぶことが重要だと思っているんです。

POLI.designの手法や考え方とか、プロジェクトの進め方とか、目線とか、発言というものを、一回全て取り込むということをしないと、中途半端なクリエイティビティとかオリジナリティを発揮することになっちゃうよなって。実践しているお師匠さんからしっかりとやり方を学ぶというのは、すごく大きいことだとと思うんですよ。

― つまりknots associatesとしても、今までのやり方にとらわれず、もう一度自分たちの枠の外に出るということを今回されているということですね。

冨田 学ぶ者の姿勢として、ちょろっとオンラインで学ぶとかじゃなくて、今回はミラノに拠点も作ります。ちゃんと現地に根ざして、あなたたちと一緒にやっていきます、学びますっていうことを見せる必要って絶対あるじゃないですか。

― 覚悟だ。

冨田 そう。それはもう実際、ものすごい感じたよね、今日子さんね。

渡辺 そうですね。

冨田 拠点を構えるっていうことのインパクト。もちろん彼らは、自分たちのやっていることに対して自信は持ってるんだけど、我々を下に見てるってことは1ミリもないんですよ。

― リスペクトしてくれていると。

冨田 うん。でもやっぱり守破離だと思うんですよね。多分日本全般のテーマでもあるだろうと個人的に思ってるんですけど、何かもう1回、もう1回ちゃんと学ぶ。外を知るっていうことの意味合いにも通じるんですけど、もう一度、しっかり学ぼうと。プライドとかそういうものはなしで、しっかりと学ぼうということですね。だからイタリアまで行って、拠点も構える。

面白さを起点に、価値を軸として動く

― ここまできて改めての質問なんですが、knots associatesのモチベーションの源泉はどこにあるんでしょうか?

冨田 正直に言うと、面白いから。以上。なんですよね。

― それは間違いなくそうなんでしょうね。

冨田 もうひとつは、これまでたくさんの企業と様々な仕事をご一緒してきて感じることがあって。それは、能力が足りないとか、アイディアがないという企業を見たことがないんです。

― それは、日本の話ですか?

冨田 日本で、日本企業において。力が足りないから結果が出てないという企業ってほぼないんですよね。

技術もあるし、人も素晴らしいし、現場は勤勉。力はある。なのに、会社として結果が出ない、事業として結果が出てない。これはもったいないし悔しい。だから、結果が出せるきっかけになったら面白いと思うんです。だって、やれる人がいるんだもん。その企業に。

ただ、そう思って我々がご支援しても、結局日本の会社の場合、ボトムアップってうまくいかないんです。ボトムアップがうまくいかないと断言できるのは、だからこそ「プロジェクトX」みたい話が盛り上がるんであって。

― ああいった話しは例外だと。

冨田 そうです。一方古来から我が国は黒船に弱い。だから世界の最高峰であるPOLI.designと提携して、日本企業を変革する手段になるということはできると思うんです。

― それは納得しやすい。

冨田 ただ、正直に言うと、全ての企業に対してそうできるかと言うと難しい。モチベーションを上げるところから取り組まないといけない人たちと仕事をしても結果は出にくい。最初からモチベーションが上がりきっている人たちと仕事をしたいんです。そうじゃないと、日本という国全体を見ていても、もう間に合わない。

― 危機感、ですね。

冨田 未来をどうしたいとか、こういう世界を作りたいというような、将来のビジョンに向かっていくっていうタイプではないと我々は自覚していて。大事にしたい価値観があって、その先に。その価値観を具現化した未来ができるという感覚なんです。だから逆に言えば、いい意味で目先の大切なことだけをやっていれば良いんだと思っています。

「私はこれで入口に立ったという感覚です」

渡辺 私も、ちょうど2年前のことをFacebookのリマインドで思い出したんですが、9月6日。私はミラノのマルペンサ空港で、スーツケースを2つ並べて、1人寂しく写真を撮っていたんです。それから3ヶ月、ミラノに滞在する初日。

その時に、なにかビジョンのような、目的のようなものがあったら、多分その場に立てていなかったと思う。

その時になにもなかったから、いろんなことが自分の興味関心のままに転がって言った感覚なんです。

― まるで野生のような。お二人の広い視点やいろんな可能性のなかで、「これが良いかも」っていう、多分直感が一番ふさわしいということってあるんじゃないですか?

渡辺 ありますね。

だから、ミラノに来ちゃえばって誘われたときに、「あ、そっか、行っちゃえば良いんだ」って思って、行っちゃった。

でもその代わり、この3ヶ月のうちに何かを獲得をして帰らなきゃっていうのは、ずっとあったんですよ。

それなりに必死に学んで、でもここまでやんなきゃいけないとか、ゴールはここだとか、そういうのは全然なくて。3ヶ月が終わった最後に、「どうだった?」ってミラノ工科大学の先生たちに言われたんです。その時、正直な気持ちで、「私はこれで入口に立ったという感覚です」って言ったんですよ。

― 3ヶ月経って、入口に立った。

渡辺 それが本当に、そのときに正直に思った気持ちでした。それが入口だった、そして入口ってことは、その先があるわけです。そこから2年間、先に先にと繋がっていろんなことが起こっていったという。

だから目先のことを大事にするっていうのはまさにその通りで、例えばすごい先、10年後のありたい場所に移行するために今これをやるんだって気持ちだったら、そんな重い荷物背負って行くことはできなかったと、私は思います。

この場所でしか、生まれないものがある

冨田 そう言いながらも、我々は10年以上ミラノに行ってますからね(笑)

― 全くの思いつきで行っているわけではないと。

冨田 10年間、ミラノデザインウィークに行き倒して。例えばシリコンバレーも、スタンフォードも、CESも、AIの展示会も。世界中の定点観測を10年単位でやりまくって、その結果イタリアだ、ミラノだ、となっているんです。

渡辺 ちょうど5年くらい前から、意味のデザインとか、デザイン・ドリブン・イノベーションとか、そういう書籍や情報が世の中に出てきたんですよね。 いわゆるポストデザイン思考のような言説に共感をしていたところ、あ、これミラノ工科大学の先生なんだなって。

この人たちがデザインというものをどう考えてるのか、知る必要があるなと感じました。だよね。

冨田 慶應義塾大学で、散々北米の、いわゆるデザイン思考だったりMITだったりスタンフォードだったりを学んで、一緒に授業までやって、オランダやイギリスの状況も見たうえで、「今の日本に必要なのはイタリアだ」と。

― そこで、日本の存在が出てくるんですね。

冨田 要は、守破離の守はどこなのかっていうことだと思います。流行に乗るのではなく、守破離の型として力があるのはどこかと探し続けた結果、イタリアデザインの哲学に行き着いたわけです。

― 2年前に入口に立って、確かに歩みを進めていると。

冨田 そうですね。拠点の話もそうですけど、拠点を持つという意思を示すと、彼らの本気度がめちゃくちゃ高まることを感じるんです。

渡辺 出張で2〜3日イタリアに行ってプロジェクトを進めていくんじゃ全然進まない。ちょうど昨日、アレッサンドロと話したときに彼もそう言ってたんですけど。やっぱりイタリアに拠点を構えて、ちゃんと根ざしてくれるということは、彼らにとっても大きいんですよね。何より現地のコミュニティに入っていける。それは大きいです。

だから、今回モンツァに行ったのも、POLI.designのいつも仲良くしてる男性がいるんですけど、彼が紹介してくれたんです。彼のプロジェクト、POLI.designのプロジェクトとしてやっているこういう企業があってね、この人はF1に携わっているから、あなたたちは絶対知り合いになっていくべきだっていうんで、繋いでくれたんですよ。

そういう形でどんどんどんどん、私達のネットワークを広げようとしてくれている。

― 日本にいるだけじゃ、絶対に繋がらないネットワーク、コミュニティですよね。

冨田 オンラインで、ヨーロッパでもアメリカでも簡単にミーティングができるからこそ、わざわざ現地に来る人との温度差は大きいですよね。わざわざ来る人達のファミリー感は全然違うなって感じます。

だってそれが、AIの時代で人間がやるべきことじゃないですか。この、人間の創造性、クリエイティビティ、独創性っていうのはここから生まれるんだよねって。今日この場所で一緒になってコーヒー飲まなかったら、あの話にはならなかったよねって。そういうことです。

― Zoomだったらこの話ははじまってもいないと。

冨田 そうです。実際に会って生まれてくるものが、今の時代、その企業、その人のヘリテージであるし、独自性でもある。それが、我々が共通して持っている認識なんです。


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