PROJECT

パラスポーツ国内競技連盟における育成・強化戦略プランに関する調査報告

業種・業界 スポーツ
規模 N/A
業務 課題抽出・調査計画・調査実施・結果分析・考察・報告
対象事業 報告書

概要

競技連盟が策定した次世代アスリートの育成・強化プランの検証を目的として、調査の計画、実施、分析、考察を行いました。

事業の背景と狙い

スポーツの国内競技連盟は世界トップレベルのアスリートの育成を目指して育成・強化戦略計画を策定しています。この計画を外部の視点で検証し内容の過不足を検討する、というミッションで調査を実施しました。スポーツ連盟という組織も多様なステークホルダーが複雑に絡み合い、アスリートの強化という目的に向かって活動するひとつのシステムです。その構造や要素間の関係性、目的との整合性を組織の外側から客観的に検証することで、システムを構成する機能や物理要素における課題を抽出し、アスリートの育成・強化に盛り込むという狙いで本事業を実施しました。

実施内容

全体像と目的の把握


調査は全体像を把握することを重視し、組織を取り巻く要素とそれらの関係性を理解するため、競技連盟の外部環境との関係性(コンテクスト)を可視化。策定された強化プランの位置づけと計画の目的との整合性を検討しました。ここでは、スポーツの環境を網羅的に捉える4つの視点(する:play、みる:watch、支える:enable、利活用する:utilize)Sports ecoSystem Enabler Framework:SSEF※1を用いて全体像を検討し、強化プランの目的との関係性を確認しました。

※1スポーツを俯瞰的に捉え、その構成要素を関係性を整理したフレームワーク。Play(する)、Watch(観る)、Enable(環境Level1を支える)、Utilize(環境Level2を利用する)の4つの場で構成される。

調査分析

調査は主に競技を「する」「みる」環境を外側で支えるステークホルダー、内側から支えるステークホルダーを対象に、ヒアリングを実施しました。

外側から支えるステークホルダーとして、複数のパートナー企業と行政のヒアリングを行いました。この競技連盟はパートナー企業も多くたくさんの支援を受けています。ヒアリングをしてわかったのは連盟が「支援を受ける、いただく側」というより、パートナーが「支援させてもらう側」という関係性を構築していることでした。その根底にあるのは「visionの共有」です。競技連盟では相手がvisionを共有する組織であることを確認してパートナーという関係を築くのです。パートナーシップとはこれにもとづくサステナブルな価値交換です。様々な形の支援を受ける一方、競技の特徴を活かしたパートナー先へのサービス提供を行っています。これらを通してパートナーは競技団体から享受する価値を十分に認識しており、このバランスが継続的な支援につながっていると考えられます。

スポーツをする環境を内側から支えるステークホルダーとしては、協会育成担当者、地域クラブ、選手関係者のヒアリングを行いました。ここでは、団体を支えることで得られる価値に情緒的なものが目立っていました。自分のコミットがスポーツの活性化に貢献することを期待し、これが支援の原動力になっていることが感じられます。またステークホルダーからのコメントによりいくつかの課題も発見できました。

因果関係の分析

ヒアリングをもとに本競技団体の活性化がどのような要素の因果関係で成立しているかを分析し、検証する対象である「育成・強化戦略プラン」がこの活性化にどのように寄与するかを検討しました。作成した因果関係図(Causal Loop Diagram)を用いて視点を俯瞰に戻し高い抽象度で捉えると、この競技団体の構造の特徴が見えてきます。

ここから、競技環境の活性化の要因が導出され、現在の取組との過不足を抽出しました。要素どうしの関係性を分析することで全体がどのように機能しているか、していないのはなぜか、といったシステムとしての視点で捉えることができます。

コンテキストの分析

また、検討対象の育成・強化プラン(システム)のライフサイクルの検討から、本プランが実践される「実施・検証・修正フェーズ」のコンテキストを分析し、各ステークホルダー間の関係性を導出。これにより団体が持つべき機能を抽出しました。

結論

システムとして捉えることにより全体を俯瞰し調査を計画。個々のステークホルダーのヒアリングで抽象度の低い(解像度の高い)情報を獲得し、これを統合して構造として可視化しました。複数のフレームワークを用いいることにより立体的に全体を捉え、関係性を認識しながら課題を抽出することができました。本調査では、チームの力を最大化するための「育成・強化プラン(システム)」の本質的な位置づけを可視化し、このプランがチーム力の向上に寄与するために不足していた視点を発見することにも繋がりました。

プロジェクトマネージャーコメント

個人的にはスポーツの国内競技連盟という専門外の領域での調査でありましたが、多くの関係者の皆様のご協力を得てたくさんのヒアリングを行うことができ、素晴らしい経験でした。どのステークホルダにも本当に熱いパッションがあり、スポーツ環境の活性化にはビジネスモデルとしての成功ももちろんですが、関わる人間の想いや共感がそこにある。必要なことはサービス開発や製品の開発の領域と全く同じです。スポーツ環境という一つの社会システムを調査分析させていただいたことで、自分自身の気づきも大きかったです。大変貴重な経験でした。や社会の不確実性の高まり、変化の速さに伴い求められる結果が変わる中、それを作り出す思考や方法論も変化します。システムとして統合的にものごとをデザインしていくことが求められる今、システムとして立体的に物事を構造的に捉えデザインしていく力の大切さを、本プロジェクトを通して改めて感じました。


実施期間
2017年8月〜2018年3月
(富田・渡辺分社化前innovative DESIGN LLCにて実施)

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